法定相続とは、被相続人(亡くなった人)が遺言を残していなかった場合、民法によって決められた相続人へ決められた相続分が渡ることをいいます。ここでは、法定相続人と法定相続分についてみていきましょう。
法定相続人とは
法定相続人とは、被相続人(亡くなった方)の財産を相続する権利のある人のことをいいます。相続人になれる人、相続人の順位などは民法で定められています。
法定相続人になれる人は、原則として身内に限られており、具体的には亡くなった方の配偶者と血族です。配偶者が相続人となるということは誰しも疑うことはないと思いますが、身内、血族といっても、どこまでが相続人になれるの?と思われることでしょう。もちろん相続人になれる範囲も民法で決められています。
まず、被相続人の配偶者はいかなる場合でも常に相続人となります。ここでいう配偶者とは、戸籍上の婚姻関係にある人のことです。いくら長年夫婦のように一緒に暮らしていたとしても、婚姻届を提出していない内縁の夫や内縁の妻は相続人にはなれません。また、離婚した元夫や元妻も相続人ではなくなります。 一方、長年別居していたとしても、戸籍上の婚姻関係が解消されていなければ、戸籍上の配偶者は相続人となります。
配偶者以外で法定相続人となる人ももちろんいますし、その順位も決まっています。具体的には以下のとおりです。
相続人順位
配偶者(戸籍上の夫からみた妻、妻からみた夫)
- 配偶者は常に相続人となります。
- 婚姻関係のない内縁の夫や内縁の妻、愛人には相続権がありません。
第1順位:直系卑属(子・孫)
子ども(実子)、養子、内縁の妻の子、愛人の子、胎児、あるいは孫、ひ孫
これらの人を直系卑属(ちょっけいひぞく)といい、民法では、子ども、養子が何人いても、すべて法定相続人となります。子どもは何歳であってもその年齢に関係なく相続人となります。被相続人が亡くなった時点でお腹の中にいた胎児であっても、その後無事に生まれてくれば相続することができます。
内縁の妻の子、愛人の子など、非嫡出子(ひちゃくしゅつし)も相続人となります。非嫡出子の相続分は、以前は嫡出子の2分の1と定められていましたが、平成25年12月5日、民法の一部を改正する法律が成立し、嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました。改正後の民法900条の規定は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用されます。
養子については相続税法上では被相続人に実の子どもがいる場合、法定相続人としては1人だけが認められ、被相続人に実の子どもがいない場合は2人までが法定相続人として認められます。簡単に言うと、相続税法上では養子については1人、あるいは2人までしか税金の控除がないということになります。ただし、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合、その養子の数に含めることはできません。
養子であっても以下のいずれかに当てはまる人は実の子どもとして法定相続人の数に含まれます。
- 被相続人と特別養子縁組により被相続人の養子となっている人
- 被相続人の配偶者の実の子どもで被相続人の養子となっている人、
- 被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた人で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった人
- 被相続人の実の子ども、養子又は直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子どもなどに代わって相続人となった直系卑属。
孫については、子が亡くなっているときに相続人となります。
第2順位:直系尊属(父と母、あるいは祖父母)
被相続人に直系卑属(子ども、あるいは孫)が誰もいないときに相続人になることができます。父と母がいないときは祖父母が相続人になり、これらの人を直系尊属といいます。 被相続人に子どもがいても、欠格や廃除によって相続権を失い、さらに*代襲相続(だいしゅうそうぞく)が生じない場合は、直系尊属が相続人となります。
第3順位:兄弟姉妹
被相続人の兄弟姉妹は、被相続人に直系卑属(子ども、あるいは孫)や直系尊属(父母、あるいは祖父母)が誰もいないときに、はじめて相続人となることができます。 被相続人に子どもや直系尊属がいても、相続権を失い、さらに代襲相続(だいしゅうそうぞく)が生じない場合は、兄弟姉妹が相続人となります。
非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは:法律上の婚姻関係のない男女間に生まれた子のこと。婚姻関係のある男女間に生まれた子は嫡出子(ちゃくしゅつし)といいます。
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは:法定相続人である子が死亡している場合に代わりに孫が相続することです。例えば、亡くなった方の子供が死亡したり廃除によって相続権を失ったとき、孫が相続できるということになります。
法定相続分とは
法定相続によって法定相続人が相続する割合のことを法定相続分といいます。被相続人は、遺言書で誰にどれだけ遺産を分けるかを指定することができますが、それを指定相続分といいます。
法定相続分は民法で定められた相続割合で、被相続人が遺言で相続分を指定しなかった場合などに基準となります。法定相続分を知ることは、誰にいくら相続されるのかを知るひとつの目安となります。後々もめないようにするためには、遺言書の作成時にも法定相続分を参考にすべきです。
法定相続分の割合
1. 相続人が配偶者と子の場合
- 配偶者:2分の1 子:2分の1
- ※子が2人の場合は、2分の1を2人で分けるので、4分の1ずつとなります。
2. 相続人が配偶者と直系尊属の場合
- 配偶者:3分の2 直系尊属:3分の1
- 直系尊属が複数人いる場合は、3分の1の相続分を按分します。
※配偶者の相続分は3分の2で、残りの3分の1が直系尊属の相続分となります。
3. 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合
- 配偶者:4分の3 兄弟姉妹:4分の1