遺言には法的な効力があり、自分の意志を大切な家族に伝えるという重要な役割があります。遺言書を書き残しておくことで、家族間の無用なトラブルも避けることができますし、相続権のない人に遺産を分けることも可能となります。
また、相続を受ける相続人が支払うことになる相続税のことも考えながら遺言を作っておくと、相続税が払えないなどのトラブルも回避できます。そのためには、相続税に詳しい専門家、相続の専門家である税理士と相談しながら遺言書を作成することをおすすめします。ここでは、遺言書を残しておくことで実現できることについて詳しくみていきましょう。
まず、以下のケースのいずれかに該当する場合は、遺言を残すことをおすすめします。
- 相続人の人数が多い
- 再婚などで家族構成が複雑だ
- 家族、親族が不仲のため、相続トラブルになりそうだ
- お世話になった人に遺産を分けたい
- 内縁の配偶者(夫・妻)や愛人など、戸籍上婚姻関係のない人に遺産を分けたい
- 生前贈与に差がついている
- 特定の財産を特定の人に相続させたい
- 遠隔地に居住し、音信不通の相続人がいる
- 財産のうち、不動産など分割しにくい財産の比率が高い
- 家族の誰かが事業承継している
- 相続人が誰もいない
- 財産を公益法人に寄付したり、地域や福祉活動に役立てたい
遺言書には効力があるため、有効な遺言書であればその遺言どおりに遺産分割することができます。遺言のメリットについて理解しておくことで、相続税においても有効な生前対策を行うことができます。遺言書を作成することでもたらされるメリットはいろいろありますが、最大のメリットは以下のとおりです。
相続人以外であっても、自分の好きなように財産を分けることができる
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行うことで遺産の分け方が決まります。その場合、遺産を相続できる権利のある人は法的に決まっており、戸籍上の関係がない第三者に遺産を分けることはできません。例えば戸籍上の婚姻関係のない愛人や内縁の妻(もしくは夫)に遺産を分けたい、相続させたい場合、遺言があればそれも可能ですが、遺言がなければできません。認知していない子どもに遺産を分けたい場合も同様です。愛人や認知していない子ども…というと、少々飛躍していて自分たちには関係ないように感じられるかもしれませんが、例えば、大変お世話になった方や老後の面倒を見てくれた人に遺産を渡したい場合も、遺言があれば実現できます。
また、相続人が誰もいない場合、遺言がなければ遺産は国のものになります。国に没収されるより公益法人などに寄付したいという場合は、遺言で指定しておくことも可能です。自分の思ったとおりに遺産分割をしてほしい場合は、遺言書を作成して生前対策をする必要があります。遺言での生前対策ができていれば、ほぼ自分が望んだとおりに財産を相続させることが可能です。
無用な争いを避け、遺産分割協議をスムーズに進めることができる
普段、仲の良い家族であったとしても、相続でもめるということはよくある話です。これは、財産の多い少ないに関係なく、誰にでも起こりうることなのです。
遺言があれば、ほぼその遺言どおりに遺産は分割されますが、遺言がない場合は法定相続人による遺産分割協議が行われます。その遺産分割協議においてスムーズに話がまとまれば何も問題はないのですが、個々人にそれぞれ事情があるため、少しでも多く遺産を受け取りたいなどの理由で、遺産分割協議で相続人全員の同意が揃わずに相続争いに発展することもあります。
例え兄弟姉妹であっても、仲の良い身内であっても、財産や多額の金銭が絡むと争いに発展することは容易に想像できます。直接相続人としての権利のない、相続人の配偶者やその両親、またはその関係者など、人間関係が複雑に絡み合うことがその要因のひとつでもあり、なかなか避けては通れないというのが実情です。 また、争いに発展しないまでも、どこまで財産を線引するのか、どの割合にすると後々まで遺恨を残さずに済むのか明確にするには労力と時間がかかります。
このような遺産相続での骨肉の争いを防いだり、遺された人たちの負担を少しでも軽くしたりするためにも遺言は必要です。そのほかにも、遺言は子供の認知、細かい財産指定もできます。
遺言のメリットや効力
遺言は相続人達の遺産分割をスムーズに行えるようにする生前対策なので、メリットや効力をしっかり理解しておくことが必要です。
- 生前贈与の差を調整できる
- 任意の人に財産の割合を多く提供できる
- 連絡がとれない相続人に財産を与えることができる
- 婚姻届を出していない女性との間にできた子供に財産を相続させることができる
- 法定相続人でない人に財産を渡すことができる(遺贈)
- 特定の相続人に財産を渡さないようにできる
- 遺言執行人を弁護士に指定できる
- 遺産を公益法人へ寄付することができる
- 相続人の中に正常な判断、分別があるものがいない場合に争いを回避できる
- 相続税申告や納税準備をスムーズに進めることができる
遺言を作成する際には、被相続人の意向を優先させることができますが、その遺言どおりに遺産を分割すると相続税が払えない、などの問題が起こる可能性があります。また、アパートなどの収益のある土地建物を相続した場合に起こりうる所得税に関することも考慮する必要があります。
相続税や所得税にも配慮しつつ、どのように分けるのが一番良いのか、相続後の対策など、少しでも不安に感じることがあれば、相続人にできるだけ負担をかけずに有利に進めることのできるよう、相続に詳しい税理士に相談されることをおすすめします。